顧客管理をノートとExcelでやる限界——「記録」はしまい込んだら武器にならない

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突然ですが、質問です。

「2年前の7月に作業したお客様を、全員言えますか?」

「ええと……田中さんと、あとどこだったかな……」となった方。大丈夫です、それが普通です。人間の記憶は、想像以上に「ざる」にできています。

でも、もしその記憶がスラスラ出てくるとしたら?「2年前の7月はこの8件。うち3件はその後連絡していない」と一瞬でわかるとしたら?——それだけで、今月の営業先リストが完成してしまいます。

今日は、多くの清掃会社が通る「ノート管理」と「Excel管理」の話です。どちらも立派な管理方法です。ただし、それぞれに「見えない限界」があることは、あまり語られません。

目次

ノート管理の限界: 「宝の地図」が読めない問題

ノート管理の4つの限界の図解

現場帰りの車の中で、今日の作業をノートにメモする。この習慣がある会社は、それだけで上位3割に入ります。記録ゼロの会社が世の中には山ほどあるからです。

でも、そのノート、こうなっていませんか?

  • ノートが現場車のダッシュボードに置きっぱなしで、事務所では見られない
  • 急いで書いたので、本人にも読めない字がある(あるあるですよね)
  • 「あのお客様の記録どこだっけ」と、ページを最初からめくって探す
  • ノートが年に1冊増えていき、3年前の記録は押し入れの段ボールの中

ノートは「書く」のは得意ですが、「探す」のが大の苦手なんです。

例えるなら、宝の地図をたくさん持っているのに、どの地図がどの島のものか分からなくなった海賊です。宝(=お客様の記録)は確かにある。でも掘りに行けない。これでは、宝がないのと同じことになってしまいます。

そしてもうひとつ、ノートには怖い弱点があります。1冊しかないことです。車上荒らし、コーヒーをこぼす、うっかり紛失——その瞬間、10年分のお客様の歴史が消えます。バックアップという概念が、紙にはありません。

Excel管理の限界: 「開かずの金庫」問題

どれが本物かわからないExcelファイルあるあるの図解

「だからうちはExcelにしたよ」という会社も多いでしょう。実際、Excelはノートより一歩前進です。検索もできるし、コピーも取れます。

でも、Excel管理歴の長い会社ほど、こんな経験があるはずです。

  • デスクトップに「顧客リスト.xlsx」「顧客リスト_最新.xlsx」「顧客リスト_最新(2)_修正版.xlsx」が並んでいて、どれが本物かわからない
  • 事務所のパソコンにしか入っていないので、現場から見られない。お客様の前で「前回いつでしたっけ」と電話で事務所に聞く
  • 入力するのはいつも社長か奥様だけ。現場スタッフの気づきはExcelに届かない
  • 行が増えるほど入力が億劫になり、気づけば最終更新が3か月前

Excelは「表計算ソフト」です。名前の通り、計算は得意です。でも「複数の人が、別々の場所から、日々書き足していく」という使い方は、そもそも苦手なんです。

例えるなら、頑丈な金庫を買ったのに、鍵が事務所に1本しかない状態です。中身は安全かもしれませんが、必要なときに開けられない金庫は、だんだん誰も使わなくなります。そして使われなくなった記録は、ただの古い表です。

「記録」はコストではなく、武器である

ここで、そもそも論に戻ります。なぜ記録を取るんでしたっけ?

「請求を間違えないため」「言った言わないを防ぐため」——もちろんそれもあります。でも、記録の本当の価値は別のところにあります。

記録は、未来の売上を作る武器です。

考えてみてください。「昨年6月にエアコン3台。奥様は洗剤の匂いに敏感。犬がいるので玄関は要注意」という記録が1行あるだけで——

  • 1年後に「そろそろの時期ですね」と先回りの連絡ができる
  • 「匂いの少ない洗剤で伺いますね」と言えて、他社と比べられない存在になる
  • 担当が変わっても、新人が10年選手と同じ接客ができる

つまり記録とは、「過去の作業の証拠」ではなく「次の仕事の予約券」なんです。この視点に立つと、管理方法に求める条件が変わってきます。

「うちは全部、頭に入ってるから大丈夫」という社長へ

ここまで読んで、「いや、うちはお客様のことは全部俺の頭に入ってる」という社長もいるでしょう。実際、長くやっている社長の記憶力は大したものです。お客様の顔も、家の間取りも、犬の名前まで覚えていたりします。

でも、あえて失礼を承知で言わせてください。社長の頭の中にしかない記録は、会社の財産ではなく、社長個人の財産です。

社長が風邪で寝込んだ日、スタッフは前回の作業内容を確認できません。息子さんに会社を継がせようと思ったとき、20年分のお客様との歴史は、口伝えでしか渡せません。そして人間の記憶は、本人が思っているより確実に、少しずつ入れ替わっていきます。「あれ、佐藤さんの家は去年やったんだっけ、一昨年だっけ」——この小さなあやふやが、実は毎年の売上を少しずつ取りこぼしています。

頭の中の記録を紙やデータに書き出すことは、記憶力の敗北ではありません。社長の頭脳を、会社全員で使えるようにするコピー機だと思ってください。

道具に求めるべき3つの条件

ノートとExcelの限界を踏まえると、お客様の記録の置き場所には、最低限この3つが必要だとわかります。

条件1: どこからでも見られること

事務所でも、現場でも、移動中の車の中でも、スマホひとつで開けること。お客様の目の前で「前回は昨年の6月ですね」と即答できるかどうかは、信頼に直結します。

条件2: 全員で書けること

社長だけが書ける記録は、社長の限界が会社の限界になります。現場スタッフが「換気扇の油が溜まり気味」と一言書ける仕組みなら、社員全員の目が営業マンの目になります。

条件3: 「次にやること」を教えてくれること

ここがノートともExcelとも決定的に違うところです。記録は、しまっておくだけでは働きません。「この人、前回から11か月経ちましたよ」「この人、1年以上ご無沙汰ですよ」と向こうから教えてくれる仕組みがあって、はじめて記録は売上に変わります。

ノートは思い出の保管庫。Excelは計算の道具。そして、お客様との関係を育てる記録には、それ専用の道具があります。

いま使っているノートやExcelを捨てる必要はありません。ただ、もし「探せない」「現場から見られない」「更新が止まっている」のどれかに心当たりがあるなら——その記録たちは、武器になりたがっています。眠らせておくには、もったいなさすぎるのです。

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この記事を書いた人

創業45年になる有限会社クリンシアの2代目代表。マットモップレンタル事業、ビルメンテナンス清掃事業、家庭用洗剤、次亜塩素酸水製造販売事業、ナノテックシステム導入支援事業、清掃用具関連販売事業、清掃業務に関するコンサルティング事業などをしています。 また飲食店事業としてテイクアウトカフェの運営も行っています。

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