息子・娘に継がせたい社長が、今日からできること

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息子・娘に継がせたい社長が、今日からできること

以前、「後継ぎがいない会社こそ記録を」という記事を書きました。今日はその逆側。「できれば、子どもに継いでほしい」と思っている社長さんの話です。

口には出さないけれど、心のどこかで思っている。でも、無理強いはしたくない。本人は都会で働いていて、会社の話はなんとなく切り出しにくい――そんな、多くの社長さんの胸の内に向けて書きます。

子どもが継ぎたくない理由の、意外な1位

子どもが家業を継ぎたがらない理由を、「今の仕事が好きだから」「田舎に戻りたくないから」だと思っていませんか。もちろんそれもあります。でも、じっくり聞くと、もっと根っこの理由が見えてきます。

それは、「会社の中身が見えないから」です。

「正直、親父の会社が儲かってるのかどうかも知らない」
「継ぐって、具体的に何をどうすることなのか、想像がつかない」
「親父にしかできない仕事に見える。自分に務まるわけがない」

人は、中身の見えない箱を引き受けられません。しかもその箱には「親の人生」という重さが入っている。見えない、重い、失敗できない。この三拍子が揃えば、逃げたくなるのが自然なのです。

つまり、継ぐ・継がないを考える以前に、判断の材料が渡っていない。ここに、親側ができることがあります。

図解
図1:中身の見えない箱は、引き受けられない。継ぐ・継がない以前に、材料が要ります。

説得はいらない。「見える会社」にしておくだけでいい

「継いでくれ」と説得するのは、たいてい逆効果です。押せば押すほど、子どもは引きます。親にできる最善のことは、説得ではなく準備です。

いつか子どもが「会社、どうなってるの?」と聞いてきた日に、「これを見てごらん」と渡せるものを作っておく。それが、会社の取扱説明書です。

仕事の中身、お金の流れ、取引先との関係、1年のリズム、そしてあなたの判断の仕方。それが整理されて読める状態にあれば、子どもは初めて「検討」ができます。継ぐにしても、継がないにしても、中身を見たうえでの判断ができる。

そして、記録には説得にない力があります。説明書のページをめくった子どもは、そこに親の仕事の凄みを見るのです。「こんなことまで考えて経営してたのか」。長年の勘が言葉になった判断基準、乗り越えたピンチの記録、取引先との信頼の積み重ね。口で「継げ」と言うより、その千倍雄弁です。

「継ぎやすい会社」は、継がなくても強い会社

ここが今日の話の要です。子どもが継ぎたくなる会社の条件を並べてみると――

・仕事の中身が見える(説明書がある)
・社長がいなくても日常が回る(属人化が解けている)
・お金の流れが整理されている
・従業員が育っていて、休みも取れる

お気づきでしょうか。これ、継ぐ人がいなくても「いい会社」の条件そのものなのです。

つまり、承継の準備は、賭けではありません。子どもが継げば最高の引き継ぎになり、継がなくても、譲る・任せる・続けるすべての場面で会社を強くする。どちらに転んでも損をしない、珍しい投資です。

イラスト
図2:継ぎやすい会社づくりは、どの未来に転んでも損をしない投資です。

盆と正月の「会社の話」が変わる

記録が育ってくると、家族の風景がひとつ変わります。帰省した子どもとの会話です。

これまでの「会社どう?」「まあ、ぼちぼちだ」で終わっていた会話が、変わります。つながりマップを見せながら「今こんな感じでな」と話せる。できごと日記の面白い話を肴にできる。会社が、話せる話題になるのです。

継ぐ・継がないの重い話は、しなくていい。ただ、会社の中身が自然と伝わる機会が、年に数回できる。数年分のその積み重ねが、いつかの決断の土台になります。急がば回れ。承継は、盆と正月の雑談から始まるのです。

今日からの進め方

手順1:まず、ふつうに記録を始める。このブログでずっと書いてきた通り、1日5分のおしゃべりから。子どものためと構えず、日々の道具として。

手順2:「創業のいきさつ」と「いちばんのピンチ」を話しておく。承継の観点では、この2つが特別に効きます。数字や手順は頭に入っても、物語は心に入る。子どもが動くのは、たいてい物語のほうです。

手順3:「この会社をどうしたいか」を、正直に残す。「継いでほしい。でもお前の人生が優先だ」――言葉にしにくい本音こそ、記録に。面と向かって言えないことも、記録なら残せます。いつかそれを読む日の子どもに、ちゃんと届きます。

手順4:機会があれば、印刷版を渡してみる。「うちの会社の説明書、作ったんだ」と。読め、とは言わない。置いておくだけ。読むかどうかは、本人が決めます。

よくある質問

「子どもが複数います。誰に、とは決めていません」――決めなくて大丈夫です。記録は特定の誰か宛てではなく「次の人」宛てに作るものです。誰が読んでもわかる形にしておけば、誰が継ぐことになっても、誰も継がなくても、機能します。

「継がせたい気持ちを、記録に書くのは重くないですか」――書き方次第です。「継げ」は重い。でも「継いでくれたら嬉しい。ただ、お前の人生のほうが大事だ」は、愛情です。読む側は、命令と願いの違いをちゃんと読み分けます。正直に、でも相手の自由を尊重して。それが伝わる書き方です。

この記事のまとめ

・子どもが継げない一番の理由は「会社の中身が見えない」こと
・説得より準備。「これを見てごらん」と渡せる説明書を作っておく
・継ぎやすい会社の条件は、継がなくても強い会社の条件。損のない投資
・物語(創業のいきさつ・ピンチ)と本音を残す。承継は盆正月の雑談から

「継いでほしい」は、口に出すと重く、胸にしまうと伝わらない。だから、形にして残しておく。あなたの30年を見えるようにしておくことが、子どもへの、いちばん誠実なラブレターです。答えを急がせる必要はありません。読める状態にして、待つ。それが親にできる、最善で最後の仕事です。

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この記事を書いた人

創業45年になる有限会社クリンシアの2代目代表。マットモップレンタル事業、ビルメンテナンス清掃事業、家庭用洗剤、次亜塩素酸水製造販売事業、ナノテックシステム導入支援事業、清掃用具関連販売事業、清掃業務に関するコンサルティング事業などをしています。 また飲食店事業としてテイクアウトカフェの運営も行っています。