このブログでは毎回「話すだけで記録が残ります」と書いています。すると、こんな声をいただきます。
「その『話すだけ』って、具体的にどうやるの? スマホに向かってしゃべるって、なんだか照れくさいし、ちゃんと文字になるのか不安で」
ごもっともです。今日は、その「話すだけ」の中身を、手順とコツまで具体的にお見せします。実は私たちもこの原稿を、かなりの部分、声で作っています。
音声入力は「マイクのボタンを押すだけ」
まず、いちばん基本の操作から。スマホで文字を打つ画面を開くと、キーボードのどこかにマイクのマークがあります。それを押して、しゃべる。それだけです。しゃべった言葉が、その場で文字になっていきます。
特別なアプリも、設定も、機械も要りません。今お使いのスマホに、最初から付いている機能です。電話ができる人なら、操作はもう身に付いているのと同じです。
そして最近の音声入力は、驚くほど賢くなりました。10年前の「音声認識」のイメージ――何度も聞き間違えてイライラするアレ――とは別物です。ふつうの速さでしゃべって、9割以上は正しく文字になります。

下手に話していい。相手はAIだから
音声入力をためらう理由の第一位は、実は技術ではなく「照れ」です。きちんと話さなきゃ、と構えてしまう。
ここで思い出してほしいのが、「会社のおまもり」の仕組みです。あなたの話は、そのまま印刷されるのではなく、AIが清書します。つまり――
「えーとね、あのー、A社さんの請求はね、月末……じゃなかった、20日締めか。20日で締めて、で、翌月の……えーと、まあとにかく請求書は25日までに出す。うん」
この話し方で、まったく問題ありません。AIはここから「A社の請求:20日締め、請求書は25日までに発送」ときれいにまとめます。言い間違いも、「じゃなかった」も、「えーと」も、ぜんぶAIが整理してくれる。あなたは正しく話す係ではなく、思い出す係。分担が決まっているのです。
照れについては、こう考えてください。独り言ではなく、「よくできる秘書に口頭でメモを頼んでいる」。実際、やっていることはそれと同じです。
うまく録れる、3つの小さなコツ
とはいえ、少しのコツで結果は良くなります。私たちが毎日使って見つけた、実用のコツを3つだけ。
コツ1:固有名詞だけ、ゆっくりはっきり。ふつうの言葉は多少崩れてもAIが直せますが、会社名や人名は間違うと直せません。「マルヨシ工業」「田中太郎(たなかたろう)」のような固有名詞だけは、一拍おいて、はっきり発音する。もし変換が間違っても、あとで「◯◯は△△が正しいよ」と話せば直ります。
コツ2:ひとつの話題は、1〜2分で区切る。10分話し続けるより、「A社の請求の話」「機械の手入れの話」と話題ごとに区切って送るほうが、整理の精度が上がります。ラーメンと定食を別々の皿で出すイメージです。
コツ3:場所と時間を決めてしまう。習慣にする最大のコツです。「車に乗った直後の3分」「風呂上がりの5分」「現場からの帰り道」。体が覚えると、照れも構えも消えます。ちなみに車の中は、声も出しやすく雑音も少ない、隠れた名スタジオです(運転中は信号待ちや停車中にどうぞ)。

声の記録は、書く記録の5倍たまる
なぜここまで音声入力を勧めるのか。理由は単純で、量が違うからです。
人がキーボードやフリック入力で打てる文字は、がんばっても1分に50〜100文字ほど。話せば、1分に300文字前後。つまり同じ5分でも、声なら書く場合の3〜5倍の中身が残ります。
しかも、書く作業は「よし、書くぞ」という気合が要りますが、話すのは気合ゼロで始められます。この「始めるハードルの低さ」こそが、続く理由です。記録は、質より前にまず量。量は、続けやすさから。続けやすさは、声から。この順番なのです。
手が汚れる仕事、軍手をしている仕事、運転が多い仕事――キーボードと相性の悪い仕事ほど、声の恩恵は大きくなります。現場仕事の会社にこそ、音声入力は向いています。
よくある質問
「方言や訛りでも大丈夫ですか」――かなり大丈夫です。最近の音声認識は方言にずいぶん強くなりました。多少変な文字になっても、AIが文脈で意味を汲んでくれます。実際、私たちは宮崎弁まじりで使えています。心配なら、最初に短い文で試してみてください。
「まわりに人がいて、しゃべりにくいときは?」――そういう日は、ふつうに文字で打っても構いません。声と文字はいつでも混ぜられます。急ぎのメモだけ文字で送って、帰りの車で詳しく話す、という合わせ技も便利です。
「録った内容が間違って文字になっていたら?」――AIとの会話なので、「さっきの、◯◯じゃなくて△△ね」と言い直せば直ります。書類のように一字一句を校正する必要はありません。意味が通じていれば、清書はAIが面倒を見ます。
この記事のまとめ
・音声入力はキーボードのマイクを押すだけ。今のスマホに最初から付いている
・下手に話していい。清書はAIの係。あなたは思い出す係
・コツは3つ:固有名詞ははっきり、話題は1〜2分で区切る、時間と場所を決める
・声は書く5倍たまる。現場仕事の会社ほど、声の記録が向いている
「話すだけ」は、比喩ではなく本当に「話すだけ」です。今日の帰り道、車に乗ったら、まず一言。「今日はえーと……」から始めて大丈夫。その一言が、会社の記録の始まりです。
字を書くのが苦手でも、キーボードが遅くても、あなたには30年しゃべってきた口があります。商談で、現場で、電話で鍛えたその話し上手こそ、記録づくりの一番の武器。道具は、あなたの得意技のほうに合わせて選べばいいのです。

