従業員に「見せる情報」と「見せない情報」の分け方

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従業員に「見せる情報」と「見せない情報」の分け方

会社の記録を残す話をすると、途中で必ずこの壁に当たります。

「残したいのは山々だけど……給料のこととか、借入のこととか、従業員に見られたら困る話もあるんだよね。だから結局、何も書けない」

わかります。そして、この悩みには、ちゃんとした答えがあります。今日は「見せる・見せない」の実用的な分け方の話です。

会社の情報は、家の部屋と同じ

考え方の土台に、家の間取りを使いましょう。あなたの家には、いろんな部屋があります。

玄関・リビング:お客さんも入れる場所。
台所・お風呂:家族なら誰でも使う場所。
寝室の引き出し:夫婦だけの場所。通帳や実印はここ。

家に来た人を全員寝室に通す人はいませんし、逆に「寝室を見せられないから」と客を玄関にも入れない人もいません。部屋ごとに、入れる人を分けている。それだけのことです。

会社の情報も、まったく同じに考えられます。「全部見せる」か「全部隠す」かの二択ではなく、部屋を分ければいい。「会社のおまもり」では、記録を項目ごとに「事業関係者向け」「家族向け」「個人・限定」の3つの部屋に分けて残せます。

図解
図1:全部見せるか全部隠すかではなく、部屋を分ける。家と同じ考え方です。

3つの部屋の、実用的な仕分け例

では、何をどの部屋に置くか。よくある項目で仕分けの実例を挙げます。

【事業関係者向け=リビング】仕事のやり方、機械の操作と手入れ、緊急時の対応、取引先の担当者と連絡先、よくあるトラブルの対処、判断の基準(値引きの上限など)。――従業員が日々の仕事で使う情報は、ぜんぶここです。迷ったら「これを従業員が知っていたら、仕事が良くなるか?」で判断してください。

【家族向け=家族の部屋】借入と返済の全体像、保険の一覧、税理士など専門家の連絡先、従業員の給与の考え方、会社をどうしたいかの想い。――もしもの日に、家族が判断するための情報です。従業員には見せないが、家族には必要、というものがここに入ります。

【個人・限定=寝室の引き出し】個人的な記録、まだ人に見せる段階でない構想、特定の人への申し送り。――自分だけの控えです。

ひとつ注意点。パスワードや口座番号そのものは、どの部屋にも書きません。書くのは「ありか」だけ(「通帳は金庫」など)。これはこのブログで何度も書いている大原則です。

「見せたくないから書かない」が、いちばん損

ここで、冒頭の悩みに戻ります。「見られたら困る話があるから、結局何も書けない」――この状態のいちばんの問題は、見せてもいい9割の情報まで、道連れで残らないことです。

仕事のやり方、連絡先、機械の手入れ。これらは従業員に見せて困るどころか、見せるほど会社が良くなる情報です。それが、1割の「見せたくない情報」と同じ引き出しに入っているせいで、全部が頭の中に留め置かれている。

部屋さえ分かれていれば、この問題は消えます。見せたくない話は家族の部屋か引き出しへ。見せていい話はリビングへ、どんどん出す。仕分けの仕組みがあることが、記録を進める勇気になるのです。

イラスト
図2:1割の秘密のために9割の宝を埋もれさせない。部屋分けが記録の勇気になります。

迷ったときの、3つの質問

実際に仕分けていると、「これはどっちだ?」と迷う項目が出てきます。そのときは、この3つの質問で決めてください。

質問1:「従業員がこれを知っていたら、仕事が良くなるか?」――イエスならリビング(事業関係者向け)です。多少「知られたくないな」という気持ちがあっても、仕事が良くなるなら出す価値があります。

質問2:「もしもの日、家族がこれを知らないと困るか?」――イエスなら、少なくとも家族の部屋には入れておく。お金と契約まわりは、だいたいこれに当たります。

質問3:「誰かが読んで、傷つく人はいるか?」――人の評価や込み入った人間関係の話は、書き方に注意が要ります。書くなら引き出し(個人・限定)へ。あるいは、事実だけを淡々と。記録は未来の誰かが読むもの、という前提を忘れずに。

それでも迷ったら、とりあえず引き出しに入れておけば安全です。あとから部屋を移すのは簡単ですから、迷いを理由に書かないのだけは避ける。これが鉄則です。

よくある質問

「従業員に『見せない情報があるんですね』と思われませんか」――家に寝室があるのは当たり前で、誰も気にしません。会社も同じです。むしろ従業員が気にするのは「仕事に必要な情報が共有されているか」だけ。リビングが充実していれば、引き出しの存在を気にする人はいません。

「妻(夫)にもまだ見せたくない話があります」――「個人・限定」の部屋をお使いください。ただ、ひとつだけ。お金の全体像だけは、いつか必ず家族の部屋に移してあげてください。それを知らされていなかった家族が、もしもの日にいちばん苦しむからです。

「仕分けを間違えて残してしまったら?」――項目の区分はあとから変えられます。定期的に(たとえば年1回の印刷の儀式のときに)ざっと見直せば十分です。

この記事のまとめ

・全部見せるか全部隠すかの二択ではない。家と同じで、部屋を分ける
・3つの部屋:事業関係者向け(仕事の情報)・家族向け(お金と想い)・個人限定
・1割の秘密のために、9割の見せていい情報まで埋もれさせるのが一番の損
・迷ったら3つの質問。それでも迷ったら引き出しへ。書かないのだけは避ける

「見られたら困るから書けない」は、今日で卒業です。部屋を分けて、リビングから堅々と記録を始めてください。あなたの会社の9割の知恵は、見せるほど会社を強くする情報なのですから。

そして、部屋分けに正解はありません。あなたの会社の事情に合わせて、あなたが決めればいい。大事なのは、仕分けに迷う時間より、話して残す時間を増やすことです。鍵のかかる部屋がある家は、玄関を開けっぱなしにできる。仕分けの仕組みとは、つまり安心して開けるための鍵なのです。

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この記事を書いた人

創業45年になる有限会社クリンシアの2代目代表。マットモップレンタル事業、ビルメンテナンス清掃事業、家庭用洗剤、次亜塩素酸水製造販売事業、ナノテックシステム導入支援事業、清掃用具関連販売事業、清掃業務に関するコンサルティング事業などをしています。 また飲食店事業としてテイクアウトカフェの運営も行っています。