紙のマニュアルとデジタルの説明書、どっちがいい?

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紙のマニュアルとデジタルの説明書、どっちがいい?

「会社の記録を残そう」という話をすると、必ず出てくる論争があります。紙か、デジタルか。

「やっぱり紙が確実だよ。停電でも読めるし」「いやいや、紙は古くなるし、探せないでしょ」――どちらの言い分にも一理があります。

今日はこの論争に、私たちなりの結論を出します。先に言ってしまうと、答えは「どっちも」です。ただし、役割分担があります。

紙とデジタル、それぞれの得意と苦手

まず、両者の力くらべを正直にやってみましょう。

紙の得意:停電でも読める。誰でも読める(機械の操作ゼロ)。金庫に入れられる。手渡しできる。
紙の苦手:直すのが大変(書き直し・刷り直し)。探すのが大変(ページをめくるしかない)。1か所にしかない(事務所の棚にあれば、現場では読めない)。
デジタルの得意:直すのが一瞬。探すのが一瞬(検索)。どこからでも読める。AIが質問に答えてくれる。
デジタルの苦手:停電・故障・電池切れに弱い。機械が苦手な人には壁がある。

こうして並べると、見えてくることがあります。紙とデジタルは、ライバルではなく、得意と苦手がきれいに逆なのです。片方の弱点を、もう片方が全部カバーしている。これはもう、組ませるしかありません。

図解
図1:紙とデジタルは得意が正反対。ライバルではなく、名コンビです。

結論:デジタルで「育て」、紙で「配る」

役割分担の答えは、こうです。

ふだんの記録と更新は、デジタルで。話すだけで増える、直せる、探せる、AIに聞ける。育てる作業はデジタルの独壇場です。
節目の保存と配布は、紙で。たまった説明書を年に1〜2回印刷して、事務所に1冊、金庫に1冊、家族に1冊。停電の日と、もしもの日のための保険です。

たとえるなら、デジタルは畑、紙は缶詰です。畑では毎日野菜が育ち、新しく採れます。缶詰は、いざというときのために、ときどき作って棚に置いておく。畑だけだと災害に弱く、缶詰だけだと古くなる。両方あると強い。

「会社のおまもり」は、この分担を最初から設計に入れています。ふだんは話して育てる。印刷ボタンひとつで、そのときの最新版が冊子の形になる。「印刷できるデジタル」が、いちばん強い形だと考えているからです。

紙の運用は、「年に一度の儀式」にする

紙側の運用は、凝らないのがコツです。おすすめは、年に一度の儀式にしてしまうこと。

毎年12月(または決算月):
1. 最新の説明書を印刷して、冊子にする
2. 表紙に日付を書く
3. 事務所の棚と金庫の古い冊子と入れ替える(古いのは処分)
4. 家族に1冊手渡す。「何かあったらこれね」のひとことと一緒に

これで所要30分。1年間、停電にも、パスワード忘れにも、もしもの日にも対応できる「紙の保険」が更新されます。

逆にやってはいけないのは、紙を「ふだんの主役」にすることです。紙のマニュアルを日常の道具にすると、直すのが億劫で更新が止まり、古い情報が現場に残り続けます。紙は保存用、育てるのはデジタル。この線引きさえ守れば、両方の良さだけが残ります。

イラスト
図2:育てるのはデジタル、配るのは紙。年に一度の儀式で両方の良さを取ります。

「デジタルは苦手」な人がいる職場では

「うちのベテランは紙しか見ないよ」という職場も、あるでしょう。それでいいのです。この方式なら、読む人は紙だけでも困りません。

大事なのは、「育てる人」と「読む人」を分けて考えることです。育てる(記録する・更新する)のは、社長やデジタルが使える誰か。読むのは、紙派は印刷版で、スマホ派は画面で、それぞれ好きな形で。デジタルが苦手な人に無理をさせる必要は、どこにもありません。

そして印刷版がきちんと更新されていれば、紙派のベテランもいずれ気づきます。「この冊子、便利だな。最近のページはどこで見られるんだ?」――その日が来たら、スマホの画面を見せてあげてください。

よくある質問

「印刷すると量が多くなりませんか」――全部を毎回刷る必要はありません。よく使うページ(連絡先、緊急対応、毎月の仕事)だけの「薄い版」を現場や事務所に、全ページ版は金庫と家族用に、と分けるのが実用的です。

「紙の保管で気をつけることは?」――中身には会社の内部情報が入るので、置き場所は「関係者しか触れない場所」が原則です。金庫、鍵のかかる棚、自宅。そして入れ替えた古い冊子は、そのままゴミ箱ではなく、シュレッダーか焼却で処分してください。

「エクセルで作った古いマニュアルがあります。どうすれば?」――捨てないでください。それは立派な財産です。内容をAIに読み上げるか貼り付ければ、デジタルの説明書に取り込めます。古い畑の種を、新しい畑に植え替えるイメージです。(この話は、次々回の記事でくわしくやります)

この記事のまとめ

・紙とデジタルは得意が正反対。ライバルではなく名コンビ
・ふだん育てるのはデジタル、節目に配るのは紙。畑と缶詰の関係
・紙の運用は年に一度の儀式に:印刷→日付→入れ替え→家族に手渡し
・読む人は紙だけでもいい。育てる人と読む人は分けて考える

「紙かデジタルか」で迷って止まっているなら、答えは「デジタルで育てて、紙で守る」。まずは育てる畑を、今日の5分から耕し始めてください。最初の缶詰(印刷版)は、1か月後には作れます。

ちなみに、この「畑と缶詰」方式には、心理的な効果もあります。印刷した冊子を手に取ると、「自分はこれだけのものを残したのか」という手応えが、画面で見る何倍も強く感じられるのです。年に一度の印刷の儀式は、備えの更新であると同時に、1年分の自分の頑張りを確かめる日でもあります。冊子が年々厚くなっていくのを見るのは、なかなかの楽しみですよ1年目は薄い冊子でも3年目には背表紙に文字が入る厚さになる。それはあなたの会社の知恵が、目に見える形で増えた証拠です。

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この記事を書いた人

創業45年になる有限会社クリンシアの2代目代表。マットモップレンタル事業、ビルメンテナンス清掃事業、家庭用洗剤、次亜塩素酸水製造販売事業、ナノテックシステム導入支援事業、清掃用具関連販売事業、清掃業務に関するコンサルティング事業などをしています。 また飲食店事業としてテイクアウトカフェの運営も行っています。