「うちは小さいからマニュアルなんて」への反論

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「うちは小さいからマニュアルなんて」への反論

「マニュアル? うちは3人でやってる会社だよ。そんな大企業みたいなもの、要らない要らない」

この言葉、よく聞きます。そして、お気持ちはわかります。マニュアルという言葉には、分厚いファイル、堅苦しい社内規定、大企業の管理部門……そんなイメージがついていますから。

でも今日は、あえて反論させてください。会社が小さいほど、記録は効きます。理由は3つあります。

反論1:小さい会社ほど、1人に詰まっている量が多い

大企業の社員1人が抜けても、会社は止まりません。仕事が細かく分かれていて、同じ仕事をできる人が他にもいるからです。1人が持っている「その人しか知らないこと」は、実は少ない。

小さい会社は逆です。3人の会社なら、1人が会社の3分の1を頭に入れています。社長にいたっては、半分以上を1人で抱えていることも珍しくない。

つまりこういうことです。「1人あたりの重要度」は、会社が小さいほど高い。大企業の1人は1000分の1ですが、あなたの会社の1人は3分の1。どちらの会社にとって「1人の頭の中」が命綱かは、計算するまでもありません。

マニュアルが大企業のものだというのは、実は逆なのです。大企業は人の代わりがいるからマニュアルがなくても回る(のに、ある)。小さい会社は人の代わりがいないからこそ、頭の中の控えが要る(のに、ない)。この「あべこべ」が、日本の中小企業のいちばんの弱点です。

図解
図1:1人の重み。1000分の1と3分の1では、備えの必要性がまるで違います。

反論2:小さい会社の記録は、小さくて済む

「マニュアル=分厚いファイル」というイメージにも、反論があります。それは大企業のマニュアルです。部署が50あれば、マニュアルげ50冊要る。

あなたの会社の説明書は、そんなに大きくなりません。連絡先の一覧、毎月の仕事の流れ、機械と道具のこと、取引先との付き合い方、お金まわり、そして判断の基準。ノート1冊分の中身で、会社の背骨はほぼカバーできます。

しかも、作り方は「話すだけ」。1日5分の積み重ねで、1〜2か月あれば背骨が立ちます。大企業のマニュアル整備は何年もかかるプロジェクトですが、小さい会社の記録は「今月始めて、来月には効いている」スピード感です。小ささは、記録づくりでは強みになるのです。

反論3:「全員わかってる」は、たいてい思い込み

小さい会社でよく聞くもうひとつの言葉が、「うちは全員気心が知れてるから、言わなくてもわかってる」です。

本当にそうでしょうか。試しに、こんな質問をしてみてください。

・コピー機が壊れたら、どこに電話する?
・社長が使っている見積もりの計算方法は?
・A社への請求書、締め日と送り方は?
・倉庫の鍵の予備は、どこにある?

「全員わかってる」の正体は、多くの場合「聞けば社長が答えてくれる」です。それは共有ではなく、依存です。気心が知れていることと、情報が共有されていることは、別の話。むしろ気心が知れている職場ほど、「今さら聞けない」「まあ社長がいるし」で、共有の穴が放置されやすいのです。

イラスト
図2:「全員わかってる」の正体は「社長に聞けばわかる」。それは共有ではなく依存です。

「マニュアル」と呼ぶから、堅苦しい

ここまで読んで、それでも「マニュアル」という言葉に抵抗がある方へ。よくわかります。だから、呼び方を変えましょう。

私たちはこれを「会社の取扱説明書」、もっと言えば「会社のおまもり」と呼んでいます。規則集ではありません。従業員を縛る道具でもありません。中身は、あなたが毎日やっていることの控え。家族と従業員が困らないための、置き手紙のようなものです。

炊飯器にもテレビにも説明書が付いてくるのに、それより何倍も複雑で、何人もの人生がかかっている「会社」に説明書がない。サイズの大小は関係なく、それはやっぱり、おかしなことだと思うのです。

よくある質問

「本当に3人の会社でも元が取れますか」――3人どころか、1人の会社でも取れます。1人親方こそ、自分に何かあったら全部が止まる究極の属人化です。取引先の一覧と仕事の流れが残っているだけで、家族が動けます。そして日々の効果(頭の整理、予定の管理、記録の検索)は、会社の人数と関係なく効きます。

「家族経営で、夫婦ふたりです。お互い全部わかっていますが」――ご夫婦で分担が分かれていませんか。現場は夫、経理は妻。それは「ふたり合わせて1人前の頭」という状態で、どちらが欠けても半分が消えます。お互いの担当を残し合っておくのが、いちばん身近な備えです。

「従業員に『会社を疑ってるのか』と思われませんか」――伝え方次第ですが、実際は逆の受け取られ方が多いです。記録を整える会社は「ちゃんとした会社」に見えます。従業員にとっても、聞かなくても調べられる、休みやすくなる、と自分の得が大きいからです。

この記事のまとめ

・1人の重みは、会社が小さいほど大きい。3人の会社の1人は3分の1
・小さい会社の説明書はノート1冊分。話すだけなら1〜2か月で背骨が立つ
・「全員わかってる」の正体は「社長に聞けばわかる」。それは依存
・堅苦しい規則集ではなく、家族と従業員のための置き手紙

「うちは小さいから要らない」ではなく、「うちは小さいからこそ、軽い記録で守れる」。考えてみれば、小さい会社は決断も速いし、記録の共有も一瞬です3人なら「説明書に書いといたよ」のひとことで全員に伝わります。大企業が何年もかけてやる仕組みづくりを、あなたの会社は今月中に終えられる。それが小ささの特権です。

今日の5分から、ノート1冊分の安心を作り始めてみませんか。会社の大きさに関係なく、そこで働く人と、その家族の人生の重さは同じなのですから。むしろ小さい会社ほど、一人ひとりの人生と会社の距離が近い。だからこそ、備えの価値も大きいのです。

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この記事を書いた人

創業45年になる有限会社クリンシアの2代目代表。マットモップレンタル事業、ビルメンテナンス清掃事業、家庭用洗剤、次亜塩素酸水製造販売事業、ナノテックシステム導入支援事業、清掃用具関連販売事業、清掃業務に関するコンサルティング事業などをしています。 また飲食店事業としてテイクアウトカフェの運営も行っています。