電話が鳴らない休日の作り方

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電話が鳴らない休日の作り方

日曜日の昼下がり。家族と出かけた先で、ポケットのスマホが震えます。画面には、会社の従業員の名前。

「社長、休みの日にすみません……。◯◯の件なんですけど、どうしたらいいですか?」

電話を切ったあと、あなたは家族に「ごめんごめん」と笑い、家族はちょっとだけ黙る。――身に覚えのある光景ではないでしょうか。

今日は、この電話を責める話ではありません。この電話が鳴らなくなる仕組みの話です。

悪いのは従業員ではなく、「答えの置き場所」

まず、はっきりさせておきたいことがあります。休みの日に電話してくる従業員は、悪くありません。むしろ、勝手に判断して大失敗するより、確認してくれるほうがずっといい。

では何が問題か。答えの置き場所が、社長の頭の中にしかないことです。

従業員の立場で考えてみてください。目の前に判断に迷うことがある。調べる場所はない。決める権限もない。だったら、聞くしかありません。つまりあの日曜日の電話は、従業員の甚えではなく、「答えにたどり着く道が、社長への電話しかない」という会社の構造が鳴らしているのです。

構造が原因なら、解決も構造でやるべきです。「休みの日は電話するな」と言うだけでは、従業員が困るか、隠れて自己流で処理して事故るか、どちらかになります。

図解
図1:電話が鳴るのは、答えへの道が「社長」1本しかないから。道を増やせば電話は減ります。

電話を減らす3点セット:説明書・基準・権限

電話が鳴らない会社は、答えへの道を3本持っています。

1本目:説明書。「やり方」の質問への道です。機械の操作、手続きの手順、よくあるトラブルの対処。これらが会社の取扱説明書にまとまっていれば、「どうやるんでしたっけ」の電話は消えます。

2本目:判断基準。「どうしますか」の質問への道です。ここが肝心です。従業員が聞きたいのは、実は答えそのものより「社長ならどう考えるか」。だから、判断の基準を残すのです。「お客様都合のキャンセルは、初回は無料でいい」「5万円までの修理は、報告だけで進めていい」。基準があれば、従業員は自分で決められます。

3本目:権限。「決めていいですか」への道です。基準を渡したら、「この範囲はあなたの判断でいい。責任は会社が持つ」と言葉にして渡す。これで従業員は、安心して自分で決められるようになります。

「会社のおまもり」なら、この3点はふだんの会話から育ちます。やり方を話せば説明書に、判断の理由を話せば基準に。そして「分身に聞く」機能が、休みの日のあなたの代わりに「社長ならこう言う」と答えてくれます。

「電話が来たら録る」で、電話は自分で減っていく

仕組みづくりの、いちばん実戦的なコツをお伝えします。かかってきた電話こそ、最高の教材です。

休みの日に電話が来たら、答えたあとに30秒だけ、こう録ってください。

「いま◯◯の件で電話があった。答えはこう。理由はこう。次からは、この基準で自分で決めていい」

これで、同じ用件の電話は二度と鳴りません。AIがその内容を説明書と判断基準に清書し、次に同じ場面が来たら、従業員は説明書か分身AIで答えにたどり着けるからです。

電話が1本鳴るたびに、鳴らない電話が1種類増えていく。この繰り返しで、あなたの休日は数か月かけて静かになっていきます。モグラたたきではなく、モグラの穴を1つずつ埋めていくやり方です。

イラスト
図2:電話1本につき30秒の録音。同じ電話は二度と鳴らなくなります。

これは根性の話ではなく、経営の話

「休みくらい、まあ出るよ。それも社長の仕事だから」――そう思う方もいるでしょう。その心意気は立派です。でも、これは根性や付き合いの話ではなく、経営の話です。

第一に、休めない社長は判断が鈍ります。脳は休ませないと切れ味が戻りません。日曜日にも細切れに仕事の判断をしている頭は、月曜日に全力を出せません。

第二に、「社長に聞けば済む」会社は育ちません。従業員が自分で調べ、自分で判断する筋肉は、その機会がないと付かないのです。電話1本で答えをもらえる環境は、優しいようでいて、実は従業員の成長の機会を奪っています。

第三に、家族との時間は取り返せません。子どもと出かけた日曜日の「ごめん、ちょっと電話」は、一回一回は小さくても、積もります。

電話が鳴らない休日は、サボりではありません。会社が自分で回る力を付けた証拠であり、社長の頭と家族を守る投資です。

よくある質問

「緊急の電話まで来なくなったら、それはそれで心配です」――その通りで、目標は「電話ゼロ」ではありません。目標は「電話の質が変わる」ことです。仕組みが育つと、「どうやるんでしたっけ」「どうしますか」が消えて、本当に社長が判断すべき大きな話だけが残ります。緊急連絡の基準(これだけはすぐ電話:事故・ケガ・大口クレーム等)も、説明書に書いておきましょう。

「基準を渡して、間違った判断をされたら?」――最初は起きます。そのときが基準を育てるチャンスです。「その判断でよかったよ、ただ次はここも見て」と伝え、それをまた30秒録る。基準は一度で完成するものではなく、実例で育つものです。そして、多少の判断ミスの損失は、社長が永遠に休めないことの損失より、たいてい小さいのです。

この記事のまとめ

・休日の電話は従業員のせいではなく、答えへの道が社長1本しかない構造のせい
・道を3本に増やす:説明書(やり方)・判断基準(考え方)・権限(決めていい範囲)
・電話が来たら30秒録る。同じ電話は二度と鳴らなくなる
・電話が鳴らない休日は、会社が自分で回る力の証明であり、経営の投資

次の休みの日、もし電話が鳴ったら。それはチャンスの合図です。切ったあとの30秒で、その電話を「最後の1本」にしてしまいましょう。半年後、静かになったスマホの横で家族とゆっくり過ごしながら、「あの30秒の積み重ねだったな」と思い出してもらえたら、この記事の役目は果たせたことになります。

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この記事を書いた人

創業45年になる有限会社クリンシアの2代目代表。マットモップレンタル事業、ビルメンテナンス清掃事業、家庭用洗剤、次亜塩素酸水製造販売事業、ナノテックシステム導入支援事業、清掃用具関連販売事業、清掃業務に関するコンサルティング事業などをしています。 また飲食店事業としてテイクアウトカフェの運営も行っています。