社長の頭の中は、会社でいちばん大事な金庫である

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社長の頭の中は、会社でいちばん大事な金庫である

ある町に、行列のできるラーメン屋がありました。スープの作り方は、大将の頭の中だけ。「レシピ? そんなもん、体が覚えとるわ」が口ぐせでした。

大将が倒れたあと、家族はお店を続けようとしました。何度も味を再現しようとしました。でも、あの味には二度と戻りませんでした。お客さんは少しずつ減り、お店は静かに閉まりました。

――さて。これは、ラーメン屋だけの話でしょうか。

帳簿に載らない、いちばん高価な財産

会社の財産と聞くと、何を思い浮かべますか。土地、建物、機械、車、銀行の預金。どれも大事です。そして、どれも帳簿に金額が書いてあります。

でも、実はもうひとつ、帳簿のどこにも載っていない財産があります。

それが、社長の頭の中です。

・30年かけて築いた、取引先との信頼と「話の通し方」
・値付けの感覚。「この仕事はこの値段なら受けていい」という判断
・トラブルが起きたときの、あの落ち着いた段取り
・「この時期はこれに気をつけろ」という季節の勘
・どの銀行の誰に相談すればいいか、という人の地図

こうした「見えない財産」は、機械や土地よりも高価なことがよくあります。なにしろ、同じものをお金で買うことができないからです。中古の機械は買えますが、30年分の勘と信頼は、どこにも売っていません。

その金庫、鍵が1本しかありません

問題は、この財産のしまい場所です。

土地には登記があり、預金には通帳があります。ところが頭の中の財産は、社長の頭という金庫にだけしまわれていて、合鍵がありません。金庫が開かなくなったら――病気でも、事故でも、あるいは物忘れでも――財産は中に入ったまま、取り出せなくなります。

ラーメン屋の大将のスープは、まさにこれでした。味という財産は最後まで金庫の中にあったのに、誰も取り出せなかったのです。

社長の頭の中は、会社でいちばん大事な資産をしまった金庫。
社長の頭の中は、会社でいちばん大事な資産をしまった金庫。

財産の「棚卸し」は、貯金に似ている

では、どうすればいいか。答えはシンプルで、頭の中の財産を、少しずつ外に出して記録することです。

これは貯金によく似ています。一度に100万円を貯めるのは大変ですが、毎日500円なら誰でもできます。頭の中の記録も同じで、「全部書き出そう」とすると一生始まりませんが、1日5分、思いついたことを話すだけなら今日からできます。

「会社のおまもり」は、その毎日500円の貯金箱です。AIとおしゃべりするだけで、話した内容が「会社の取扱説明書」として貯まっていきます。535日後ではなく、初日から財産になります。

「今日はA社と価格の話をした。あそこは即決を嫌うから、一度持ち帰らせるのがコツ」――こんな一言も、立派な財産の積み立てです。AIが自動で整理して、しかるべきページにしまってくれます。

話すと、頭の中まで整理される

そして、この「財産の棚卸し」には、思わぬおまけが付いてきます。話している本人の頭が、どんどん整理されていくのです。

人に話すと考えがまとまる――この経験は誰にでもあると思います。友だちに悩みを話しているうちに、「あれ、答え出たわ」となる、あの現象です。

AIに会社のことを話していると、同じことが起きます。「この仕事、実はもう手放していいな」「これは若い子に任せて大丈夫だな」「うちの強みは、結局これだな」。金庫の中身を出して並べてみると、自分の会社が初めて一望できるのです。

その金庫の鍵を、安心して次の人へ渡せる形にしておく。
その金庫の鍵を、安心して次の人へ渡せる形にしておく。

大将のスープを、あなたの会社で終わらせない

冒頭のラーメン屋の話には、もしもの世界があります。

もし大将が、元気なうちに誰かに向かってスープの話をしていたら。「まず鶏ガラをね、こう下ゆでして」と、いつもの調子でしゃべっていただけでも、お店は続いたかもしれません。難しい作業ではなかったはずです。ただ、話す相手と、書き留める仕組みがなかっただけです。

いま、その仕組みはあります。話し相手はAIが務めます。書き留めるのもAIがやります。あなたはただ、いつもの調子で話すだけ。

あなたの頭の中の金庫には、30年分の財産が眠っています。合鍵づくり、今日から始めませんか。

何から話せばいいか分からない方へ――最初の10のお題

「話すだけでいいのは分かった。でも、何から話せば……」という方のために、金庫の中身が出やすいお題を10個置いておきます。どれかひとつ、今日の5分でどうぞ。

1. 創業のとき、いちばん大変だったこと
2. 会社最大のピンチと、どう乗り切ったか
3. 値段の決め方。「この仕事はいくらで受けるか」の考え方
4. いちばん大事な取引先と、その付き合い方のコツ
5. 毎月、必ずやっていること(請求、支払い、点検……)
6. 「これだけは絶対に手を抜くな」と思っていること
7. 困ったときに相談する人リスト(銀行、税理士、同業の友人)
8. 道具や機械の、説明書に載っていないクセ
9. 従業員それぞれの、得意なことと頼み方
10. もし自分が1か月休むなら、真っ先に伝えたいこと

コツは、上手に話そうとしないことです。思い出話がわき道にそれても、まったく問題ありません。わき道にこそ、いい財産が落ちているものです。整理して仕分けるのはAIの仕事なので、あなたは気持ちよくしゃべることだけ考えてください。

1日ひとつなら、10日で金庫の棚がひとつ空きます。その頃にはきっと、「話すと頭がスッキリする」という、もうひとつの効果にも気づいているはずです。

そして、この10のお題を全部話し終えたころ、あなたの会社には「社長の頭の中の写し」という、お金では買えない資産がひとつ増えています。土地でも機械でもない、けれど会社でいちばん高価な資産です。帳簿には載りませんが、家族と従業員には、何よりの安心として伝わります。

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この記事を書いた人

創業45年になる有限会社クリンシアの2代目代表。マットモップレンタル事業、ビルメンテナンス清掃事業、家庭用洗剤、次亜塩素酸水製造販売事業、ナノテックシステム導入支援事業、清掃用具関連販売事業、清掃業務に関するコンサルティング事業などをしています。 また飲食店事業としてテイクアウトカフェの運営も行っています。

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