「見える化」すると売上が変わる——1年の数字をながめる習慣

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健康診断を思い浮かべてください。体重、血圧、血糖値——数字を見た瞬間、「ああ、飲みすぎだな」「運動しなきゃな」と、言われなくても打ち手が浮かびます。

数字には、そういう力があります。眺めるだけで、次にやることを教えてくれる力です。

ところが、会社の数字になると、多くの社長がこう言います。「売上は……まあ、通帳を見ればだいたい」。体重計には毎朝乗るのに、会社の健康診断は年に1回、税理士さんに決算書を作ってもらうときだけ。しかもその決算書、正直、ちゃんと眺めていますか?

今日は、難しい会計の話は抜きで、「1年の数字をながめる」というシンプルな習慣が、売上をどう変えるかの話です。

目次

「見える化」とは、凸凹を絵にすることである

ながめる4つの数字のダッシュボードの図解

見える化、というと大げさに聞こえますが、やることは単純です。数字を、並べて、絵にする。それだけです。

たとえば月別の売上を12本の棒グラフにしてみる。すると、通帳の数字の羅列では見えなかったものが、一瞬で目に飛び込んできます。

「6〜7月と12月に山。2月と9月に深い谷。……うちの売上、山2つで1年分の半分を稼いでるのか」

この「山と谷の形」こそ、あなたの会社の体型です。そして体型が見えると、健康診断と同じで、打ち手が勝手に浮かびます。谷の2月に何を売るか。山の12月の取りこぼしをどう防ぐか。——実は、この連載でお話ししてきた閑散期対策も年末の先約も、ぜんぶ「谷を埋め、山を確実に獲る」という、グラフから浮かぶ打ち手だったのです。

数字が見えていない会社は、いわば体重計に乗らずにダイエットをしている状態。頑張りが効いているのかどうかも、わからないまま走り続けることになります。

ながめるべき数字は、たった4つでいい

数字は地図で責める道具ではないという図解

「数字の管理」と聞くと、細かい帳票の山を想像しますが、小さな清掃会社が年に1回ながめるべき数字は、4つで十分です。

その1: 月別売上の12本グラフ——会社の「体型」

まずはこれ。山と谷の形を頭に入れます。去年のグラフと重ねると、さらに情報が増えます。「去年より谷が浅くなった=閑散期対策が効いてる」と、努力の答え合わせができるからです。

その2: 新規とリピートの比率——会社の「体質」

今年の売上のうち、初めてのお客様が何割で、2回目以上が何割か。リピートが6割を超えていれば、体質は安定型。新規が8割なら、毎年ゼロから走る自転車操業型で、広告費が利益を食い続けます。この比率は、来年、集客と関係づくりのどちらに力を入れるべきかを教えてくれる、一番大事な健康指標です。

その3: メニュー別の売上——「何屋さん」かの確認

エアコン、水回り、定期清掃、床……何がいくら稼いだか。たいてい、思い込みと現実がズレています。「うちはエアコン屋のつもりだったが、実は定期清掃が一番の稼ぎ頭だった」——なら、定期をもっと増やす提案に力を入れる。数字は、社長の思い込みを直してくれる唯一の存在です。

その4: お客様の「きっかけ」内訳——お金の使いどころ

新規のお客様は、何を見て来たのか。紹介、Google、チラシ、看板。「チラシに10万円かけて2件、紹介はタダで8件」という現実が見えたら、来年の10万円の使い道は考え直しですよね。

「ながめる会」を年中行事にする

この4つの数字を、年に1回——おすすめは年末繁忙期前の10月か11月、または年明けの1月に——お茶でも飲みながら、1時間だけながめる。名付けて「ながめる会」です。スタッフがいる会社なら、一緒にながめるのがおすすめです。「うちの会社、こういう体型なんだ」を全員が知っているだけで、日々の動きが変わってきます。

大事な心構えがひとつ。ながめた結果の打ち手は、1つか2つに絞ること。「谷の2月に、夏のお客様への水回り提案をやる」——これだけ決めて、1年後にまたグラフで答え合わせをする。あれもこれもと5つ決めると、たいてい全部やらずに終わります。健康診断のあと、いきなり運動も禁酒も食事制限も始めた人が続かないのと同じです。

スタッフと見るときの注意: 数字は「責める道具」ではなく「地図」

「ながめる会」をスタッフとやる場合、ひとつだけ注意があります。数字の使い方を間違えると、この会は一瞬で嫌われます。

ダメな使い方は、「9月の売上が低い。みんな、どうするんだ」と詰める道具にすること。こうなった瞬間、スタッフにとって数字は「怒られる材料」になり、来年から誰も本当のことを報告しなくなります。悪い数字が隠される会社は、良くなりようがありません。

正しい使い方は、「9月に谷があるね。ここを埋めるアイデア、何かない?」と全員で眺める地図にすること。犯人探しではなく宝探し。「谷の月に、夏のお客様に水回りの案内を出してみたら?」という現場からの一言は、この空気の中からしか出てきません。

数字は過去を裁くためではなく、来年を良くするためにある。この一線を社長が守っている限り、「ながめる会」は年に一度の楽しみな行事になります。

正直な話: 一番大変なのは「集計」である

ここまで読んで、多くの方が思ったはずです。「ながめるのはいいけど、その数字を作るのが大変なんだよ」——。

その通りです。請求書の束をひっくり返し、電卓を叩き、Excelに打ち込む。この集計作業が丸2日かかるから、みんな年1回の「ながめる会」すらできない。これが現実でした。

でも、思い出してください。月別売上も、新規リピート比率も、メニュー別も、きっかけ別も——すべて日々の作業記録から機械的に集計できる数字です。つまり、日々の記録がデータとして貯まる仕組みさえあれば、集計は一瞬で終わる。最近は、貯めた記録からグラフまで自動で出してくれたり、AIが「今年の傾向と来年の対策」まで語ってくれたりする道具もあります。

1年分の数字をながめる1時間は、どんな経営セミナーより安くて、どんなコンサルタントより正直です。今年の年末は、体重計に乗るつもりで、会社の数字をながめてみてください。来年やるべきことが、グラフの凸凹の中から、必ず顔を出します。そして来年の今頃、今年のグラフと重ねてながめる楽しみができたら——あなたの会社はもう、勘ではなく数字で舵を切る会社になっています。

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この記事を書いた人

創業45年になる有限会社クリンシアの2代目代表。マットモップレンタル事業、ビルメンテナンス清掃事業、家庭用洗剤、次亜塩素酸水製造販売事業、ナノテックシステム導入支援事業、清掃用具関連販売事業、清掃業務に関するコンサルティング事業などをしています。 また飲食店事業としてテイクアウトカフェの運営も行っています。

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