「売上を増やしたい。よし、新規のお客様を開拓しよう!」
チラシを1,000枚まいて、ホームページを作り直して、ポータルサイトにも登録して——。それでも思ったほど問い合わせが来なくて、がっかりした経験はありませんか?
実は、多くの清掃会社・ビルメン会社が、売上アップの順番を間違えています。
先にやるべきは新規開拓ではありません。「今までのお客様を大切にすること」です。今日はその理由を、数字と例え話でお伝えします。
穴の空いたバケツに、水を注いでいませんか?
小学校の理科の時間を思い出すような話をします。
あなたの会社を「バケツ」だと思ってください。お客様は「水」です。新規開拓は、蛇口をひねってバケツに水を注ぐこと。
ところが、そのバケツの底に穴が空いていたらどうでしょう?

蛇口を全開にしても、注いだそばから水は漏れていきます。「水が減った!もっと注がなきゃ!」と蛇口ばかり気にして、足元の穴に気づかない——これが「新規開拓を頑張っているのに売上が増えない会社」の正体です。
穴とは何か。一度仕事をしたのに、その後ほったらかしにして離れていったお客様のことです。
去年エアコンクリーニングをしたあのお宅、その後連絡しましたか?一昨年ワックスをかけたあの事務所は?連絡していなければ、その水はもう、静かに漏れ出ています。しかも漏れるときは音がしません。「おたくにはもう頼まない!」と言ってくれるお客様はほとんどいなくて、ただ黙って、忘れて、他社に頼むのです。
数字で見る「1対5の法則」
マーケティングの世界には、昔から有名な法則があります。
新規のお客様を1件獲得するコストは、既存のお客様に再び利用してもらうコストの5倍かかる——「1対5の法則」です。

考えてみれば当たり前です。新規のお客様に選んでもらうには、まずあなたの会社を知ってもらい(チラシ・広告費)、信用してもらい(実績の説明・相見積もり)、ようやく1件の受注になります。
一方、既存のお客様はどうでしょう。あなたの会社をもう知っています。仕事ぶりも見ています。玄関のどこに鍵があるかも、社長の顔も知っている。必要なのは「そろそろいかがですか?」のひと声だけ。ハガキ1枚85円、電話1本10分です。
さらにもうひとつ、「5対25の法則」というものもあります。お客様の離脱を5%減らすだけで、利益は25%以上改善するという法則です。穴を少し塞ぐだけで、バケツの水は驚くほど貯まり始めるのです。
お客様が離れる理由、1位は「不満」ではありません
「連絡が来ないってことは、うちの仕事に不満だったのかな…」
そう考えて連絡をためらう方が多いのですが、実は逆です。お客様が離れる理由の圧倒的1位は、不満でもクレームでもなく——
「なんとなく。忘れていたから」です。
思い出してください。あなた自身、行きつけだった床屋や定食屋に行かなくなったこと、ありませんか?別に嫌いになったわけじゃない。引っ越したわけでもない。ただ、なんとなく足が遠のいて、そのまま忘れただけ。
お客様も同じです。エアコンの汚れは1年経てば元通りなのに、あなたの会社の名前は1年経つと思い出せない。忘れられることこそが、最大の敵なんです。
そしてこれは、裏を返せば朗報です。不満で離れたお客様を取り戻すのは大変ですが、忘れているだけのお客様は、思い出してもらえば戻ってくるからです。
「大切にする」とは、具体的に何をすることか
精神論ではなく、行動の話をします。既存のお客様を大切にするとは、この4つです。
1. 作業が終わったら、記録を残す
「いつ・どこで・何を・いくらで」に加えて、「奥様は腰痛持ち」「事務所の犬はポチ」のようなひと言も。この記録が、次の連絡の質を決めます。
2. 1年後に思い出す仕組みを作る
人間の記憶に頼ってはいけません。カレンダーでもノートでも顧客管理システムでも、「去年の今ごろのお客様」が自動で目に入る仕組みを用意します。
3. 売り込みではなく「気づかい」の連絡をする
「エアコンの調子はいかがですか?昨年の清掃から1年になります」——これは営業ではなく点検のお知らせです。お客様は「覚えていてくれた」と感じます。
4. 紹介の種をまく
満足してくれたお客様に「お知り合いで困っている方がいたら」と一言添える。既存のお客様は、新規のお客様を連れてきてくれる営業マンでもあるのです。
バケツの穴を塞げば、新規開拓が活きてくる
誤解しないでほしいのですが、新規開拓が不要だと言っているのではありません。順番の話です。
穴を塞いだバケツなら、注いだ水はちゃんと貯まります。既存のお客様がリピートしてくれる体制を作ってから新規開拓をすれば、獲得した新規のお客様も1回きりで終わらず、2年後も3年後も売上を生む「資産」になります。
蛇口を全開にする前に、まず足元のバケツを見てください。穴は、今日から塞げます。


